かべたろう5 ( 家族 )
長女が小学生2年生のとき(「19年前の日記9」参照)、
出任せでリクエストした「かべたろう」のお話に、
出任せで話した話を展開する。
2007年9月19日「太郎」
2008年7月25日「おばばの野望」(続かべたろう)
2009年6月17日「鶴の少女」(かべたろう3)
2009年7月18日「安寿と太郎」(かべたろう4)
◆あんじゅの目に、太郎はあわてたと。
「出ていくことないで、お前ずっとこの家にいれば」
太郎はつい口走ってしまったと。
「え」
「おばばに頼んでみる」
「でも、家長のおじじは、決して許さないことでしょう」
「おばばが通れば家長はついてく」
「え? で、でもごめんなさい」
「え?」
「あたしずっとこの家にいることできないです。あたし帰るとこあるです」
「ええっ、さっき行くとこないって」
「行くとこないですが、帰るとこはあるんです。」
「えええっ??なんじゃそりゃ。」
「あたしは、かはいそうな鶴の化身です。助けてくれればいいことあります。」
太郎は茫然としたと。
そして、むすめが本当に鶴の化身かもしれないと思い始めていたと。
はっと我に帰って、太郎はいろいろ廻らしたと。
「な、なして? ーわ、わかた、おばばのおならが臭いからじゃ」
「いえ、まだ知りません」
「シリませんて、ヘー気で洒落なぞを・・」
「え?」
「んじゃ、おばばの化けたの見たからか?」
「おばば、お化け(敬語)になるんですか?」
「んだ、あのキリシタンから鏡もらってからというもの、
1週間に一度、顔に白いの塗ってぬって化けるんじゃ。
そのあとシワが浮き立ってそれは凄いもんじゃあ」
「いや、こわい。太郎さま。あ、あたしを脅かしてどうなさいます」
「なあーにを脅かしとる?」
おばばがぬっと顔を出したと。
「きゃあー」
思わず太郎に抱きついたと。
「たろ、あんまり脅かすと娘に嫌われっと」
「どっちが脅かしとると」
「ほれ、ええから娘、ここに拇印を押せ」
「は、はい」
言われるままに書類に押そうとするが朱肉がない。
ばばは娘の手を取ると、太郎の唇の傷の血に親指を付けて書類に押し付けさせたと。
「これでええ」
おばばは不吉そうに笑ったと。
太郎は恍惚になる暇なく、胸騒ぎを覚えて
「ばば、なんじゃ、それ」
「役場に届けるんじゃ。あんじゅは今日からうちの娘じゃ」
「「えええっ!!!」」(二人の驚き)
「んじゃ、行ってくるでの」
「ま、まて」
太郎はおばばに寄って小声で聞いたと。
「お、俺とあんじゅは兄妹になるんか」
「んだ」
「兄妹になるってことは、
その、
つまり、
あの・・」
「なんじゃ、はっきり言ええ。時間ねえが。」
「ケッ、ケッコンできないがの!」
太郎はケツアツを限界まで上げて、
鬼退治のために溜めた勇気を全て使い切って聞いたと。
「あ?」
「ダッ、ダから・・」
「お前、今ものすご勇気だしたろ。」
「うう」
「まったく、わしが結婚申し込まれたかと思ったで」
「どしてそんなありえない勘違いするが」
「お前も何か勘違いしとるんじゃないけ」
「へ?」
「こな届けする前からケッコン出来るわけないじゃろが」
「ええ!?な、なんでじゃ?」
「だいたい人間が宇宙人と結婚できると思うか?」
「ええっ!あ、あんじゅは宇宙人だったんか!」
太郎はおばばの観察眼に度肝を抜かれたと。
そういえば、あんじゅの未熟な言葉使いや空への飛翔願望、
不思議な白装束にいちいち合点することばかりだったと。
「あほう、宇宙人の訳なかろ。何考えてるんだか。」
ばばは吐き捨てるように言っと。
「え?」
「ええか、あんじゅはその宇宙人よりも、
もっと人間から離れたソンザイだっちゅうことだがね」
「ええっ、宇宙人よりも?」
「おまいが言ったが。」
「俺が?」
「鶴だべ」
翌日からあんじゅは家族だったと。
太郎は毎日が楽しくてしょうがなかったと。
子熊との勝負は互角になったと。
また、あんじゅが来てからずっと一日に1、2回、入り口に木の実や果物、魚が相変わらず置かれてたと。
「太郎さま、鶴亀算の時間です」
「亀が出てこないから亀ぬき鶴亀算じゃの」
「ああ、ごめんなさい。あたし亀さんのお友達いなくて・・」
「そんなことなら簡単じゃ。ここから2里半行けば浦島ガ浜に着く。
その浜で子供たちに遊ばれている亀を助けてやればイイコトアリマス。」
「ああ、太郎さま」
安寿ははみかむように笑ったと。
「お、笑った笑った」
太郎は初めて安寿を微笑ませたことで満足だったと。
「あたし、足治ったら連れてって下さい」
「おっしゃ、今でもおんぶして行けるで」
「え」
「い、いや、鶴亀いこう」
「はい、つるつる算ですね」
「おう」
「むかし或る所に可哀想な鶴さんが居ました。何故可哀想かというと・・」
「あれ、鶴亀算ってそうやって始まるんだっけ」
「そうです。前からそうです。太郎さま、鶴亀算なさったことないですか」
「えっ?えーっと。あんじゅ続けれ」
「むか〜しむかし、と〜ってもかはいそ〜なつるさんがおりました。
ど〜してかはいそ〜かとゆ〜と〜・・」
あんじゅはここまで話しが進むと声が震えてきて、ほとんど泣きそうになったと。
「ど、どうした」
「ごめんなさい、あたし鶴亀算やるとき、いつもクライマックスで泣きます。」
「鶴亀算にクライマックスなんかあるかい。一体どんな鶴亀算なんじゃ」
ままごとのような勉強中におばばがやってきたと。
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